九州の大分県と四国の愛媛県は豊予海峡を挟んで向かい合っています。九州と四国の間は本州と九州を結ぶ関門海峡大橋、関門海峡トンネル、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋や明石海峡大橋、本州と北海道を結ぶ青函トンネルといった橋やトンネルがなく、「陸続き」ではありません。それを補っているのが大分県の佐賀関と愛媛県の三崎を結ぶ「国道九四フェリー」。フェリーの大分県側の発着地、佐賀関フェリーターミナルについて紹介します。
国道九四フェリーとは
概要
国道九四フェリーは、大分県の佐賀関港と愛媛県の西端部に位置する三崎港を70分で結ぶ、九州~四国間を結ぶフェリーでは最短距離の航路です。「涼かぜ」、「遊なぎ」、「速なみ」の3隻の船で運航しています。フェリーの航路は国道197号線の一部で、九州と四国を結ぶ貴重な「生活の足」として、日常生活にも浸透しています。平成24(2014)年2月就航の「速なみ(はやなみ)」と平成28年(2016)6月就航の「遊なぎ(ゆうなぎ)」、令和3年(2021)2月就航の「涼かぜ(すずかぜ)」と相次いで投入された3隻の船で九州と四国を結んでいます。近年のフェリーに見られる船内設備の拡充が図られていて、あらゆる世代の人たちが快適に過ごせるよう配慮がなされています。
ダイヤについて
地域の人々の「生活の足」として欠かすことができない国道九四フェリーだけあって、1時間に1本とダイヤも多いです。
佐賀関港出港時刻
7:00、8:00 、9:00、10:00、11:00、13:00、14:00、15:00、16:00、17:00、18:00、19:00、20:00、21:00、22:00 23:00
三崎港出港時刻
7:30、8:30、9:30、10:30、11:30、12:30、14:30、15:30、16:30、17:30、18:30、19:30、20:30、21:30、22:30 23:30
佐賀関フェリーターミナル
国道九四フェリーの大分県側の乗り場が佐賀関フェリーターミナルです。
新ターミナルビル
佐賀関フェリーターミナルビルは令和元年(2019)12月1日から供用開始された新しいビル。外壁にガラス素材を多用するなど明るく開放感のある空間デザインとなっていて、3階には佐賀関港を一望でき、送迎にも利用できる展望デッキが設置されています。佐賀関港の新ランドマークとして乗客だけでなく、地元の人にも親しまれるようにという願いが込められています。乗船予約・発券システムを更新し、乗船券の「インターネット事前決済」や、事前決済した乗船券を窓口に並ぶことなく、受け取り可能な自動発券機「らくらくチェックイン端末機」を導入しています。
FOOD & COFFEE カルマーレ
「FOOD & COFFEE カルマーレ」はターミナルビル2Fにあるレストラン&カフェ。佐賀関名産の海藻「くろめ」が入ったくろめうどんや大分名物のとり天定食などを食べることができます。「くろめ」はくろめは、豊後水道速吸のきれいな海で採れる海藻。ねばりが強く、アミノ酸、天然ミネラル、食物繊維が豊富です。
FOOD & COFFEE カルマーレ
営業時間:10:00~16:45(L.O. 16:20)※フェリーが欠航の場合は休業。
売店
大分県の特産品を中心に、九州各地のお土産や珍しい焼酎などを数多く取り揃えています。
アクセス
最寄りの駅はJR幸崎駅。幸崎駅からタクシーで約15分です。大分バスの路線バスD75、D77でもターミナルへ向かうことができます。バスは大分駅発着、幸崎駅経由です。大分駅からそのまま乗車してターミナルに向かうこともできますが、交通渋滞による遅延の可能性は高くなります。
おすすめ周辺観光 関崎海星館
佐賀関の岬に建つ展望・天文施設。全国的に有名なブランド魚「関あじ・関さば」の漁場として知られる豊予海峡を望む300度のパノラマが楽しめます。テラスや展望室は持ち込み飲食OKです。天体観測室では大型望遠鏡を使い、昼は太陽のほか金星や明るい一等星などを、夜は季節の星々を巡る星空散歩を楽しめます。初夏のアジサイをはじめ、四季折々の花が彩る遊歩道を下りて、「幸せの鐘」や明治34年(1901年)に初点灯した大分県最古の「関崎灯台」への散策もお薦め。日豊海岸国定公園内にあり、渡り鳥の中継地としても賑わいます。
ちょっと足を延ばして 臼杵城下町
臼杵は佐賀関フェリーターミナルから車で約30分のところにある日豊海岸に面した城下町。戦国時代にキリシタン大名大友宗麟が丹生島城(臼杵城)を築城して、南蛮貿易で栄え、南蛮文化が花開きました。江戸時代になると稲葉家5万石の城下町として栄えました。現在も当時の町割りが残されていて、当時の面影をしのぶことができる歴史情緒あふれる街並みが残されています。特に二王座の歴史の道は狭い路地のいたるところに城下町特有の面影が残っていて、高い石垣、重厚感のある瓦屋根、白壁の建物や多くの寺院が坂道沿いに長く続いています。「尾道三部作」などで一世を風靡した故・大林宣彦監督が現在も歌い継がれている名曲「なごり雪」をモチーフにした同名のタイトルの映画の撮影地にもなりました。
ちょっと足を延ばして くじゅう高原
くじゅう高原のある「阿蘇くじゅう国立公園」は「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づく「国立公園満喫プロジェクト」に選ばれた8つの国立公園の一つ。くじゅう連山などの火山群とその周囲に広がる雄大でなだらかな高原、そして湧き上がる豊かな温泉が魅力。豊かな自然景観を車窓から楽しめるくじゅう高原。日帰りバスツアーが訪れるスポットを2ヶ所紹介します。
九重“夢”大吊橋
「九重“夢”大吊橋」は鳴子川渓谷の標高777m地点に架かる長さ390m、川床からの高さ173mでともに日本一の規模を誇る日本一の人道専用吊橋。橋の上からは日本の滝百選に選ばれた震動の滝の雄滝や雌滝、紅葉で有名な九酔渓の絶景を楽しめます。
くじゅう花公園
「くじゅう花公園」ではくじゅう連山や遠くに阿蘇五岳を背景とした美しい自然が満喫できて、春はチューリップやビオラ、シバザクラ、ポピー、初夏から夏にかけてはラベンダーやひまわり、秋はラベンダーやケイトウ、ひまわりと四季折々の花々に囲まれて癒しとくつろぎのひと時を過ごすことができます。
ちょっと足を延ばして 「荒城の月」のモデル 岡城跡
夭折した悲劇の天才作曲家、滝廉太郎の名曲「荒城の月」のモデルになった城。滝廉太郎は少年時代を竹田の町で過ごし、音楽の道を志すようになりました。高等小学校を卒業後、東京音楽学校(現在の東京芸術大学音楽学部)に進学、優秀な成績で卒業した後、ドイツのライプチヒのメンデルスゾーン音楽院に留学しました。留学中に当時、不治の病といわれた肺結核を患い、志半ばで帰国。病状は回復することなく、現在の大分市内の自宅で23歳11か月の若さでこの世を去りました。周囲を河川に囲まれた阿蘇溶岩の台地の上にある天然の要塞。城跡は石垣を残すのみですが、哀愁を帯びた名曲のメロディを彷彿とさせることができます。勇壮でユニークな曲線デザインを多用し石垣は難攻不落といわれた堅固さを誇ったかつてをしのぶことができます。大手門跡はヨーロッパの古城を彷彿させます。日本で岡城にしかない通路の石垣塀の上ある半円柱状の「かまぼこ石」も見どころです。令和2年10月には城下町に開館した竹田市歴史文化館・由学館では岡城跡について楽しみながら学べる「岡城ガイダンスセンター」があります。また滝廉太郎旧宅や武家屋敷も近く。江戸時代の町割りが今も残る城下町巡りもおすすめです。
国道九四フェリーは陸路で結ばれていない九州と四国を結ぶ貴重な交通手段。佐賀関フェリーターミナルはフェリーの乗下船だけでなく、家族連れやカップルをはじめ、展望スポットとしても今後、人気を集めそうです。「関あじ関さば」の漁場として知られる豊予海峡を眺めて、レストランやカフェでの食事も楽しむといった楽しみ方もあります。