「クールジャパン戦略」の一環として、日本各地に残ろ歴史・文化遺産を観光活用して集客を図り、地域活性化に繋げると同時に、次世代に継承していこうとする試みが全国各地で試みられています。「日本遺産」はこうした取り組みの一つ。ここでは「日本遺産」の一つ、福島県の”未来を拓いた「一本の水路」-大久保利通“最期の夢”と開拓者の軌跡 郡山・猪苗代-”を紹介します。
目次
日本遺産とは
「日本遺産」とは地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーです。地域に点在する遺産を「面」として捉え、ストーリーによりパッケージ化して活用し、遺産や地域文化の保護だけではなく、それを活用して地域活性化を図ることを目的としています。市町村が都道府県を通じて申請して、文化庁が承認します。
日本遺産の認定基準は次の3つです
- ストーリーが興味深く斬新で、地域・日本の魅力を十分に伝えること。
- 日本遺産に認定された後、どう活用するかの具体的なビジョンがあること。
- 地域活性化を推進するにあたり、可能な体制が整備されていること。
日本遺産 未来を拓いた「一本の水路」
-大久保利通“最期の夢”と開拓者の軌跡 郡山・猪苗代-
日本遺産”未来を拓いた「一本の水路」-大久保利通“最期の夢”と開拓者の軌跡 郡山・猪苗代-”は明治時代に行われた猪苗代湖より郡山の安積原野に水を引く「安積開拓・安積疏水開さく事業」に係る関連資産をストーリーにしたものです。明治維新後、「富国強兵」政策の下、新産業の育成を図る「殖産興業」の進展と、明治政府の発足により、困窮していた士族の救済を目的として、この地を視察した時の内務卿・大久保利通が事業を実施することを決断、実行に移されました。「安積疏水」の完成によってこの地は米の作付け面積が大幅に増えて一大穀倉地帯となり、清らかな水が一年中流れるようになり、鯉の養殖が盛んになりました。水力発電所が設置されたことで、その電力を活用した製糸、紡績などの産業が盛んになりました。
日本遺産「一本の水路」の見どころ
”未来を拓いた「一本の水路」-大久保利通“最期の夢”と開拓者の軌跡 郡山・猪苗代-”は実に38の構成資産からなります。構成資産の中で見どころとなるスポットを紹介します。
開成山公園
明治初期に行われた開拓事業時に植樹された桜が今も息づいていて、現在では福島県を代表する桜の名所となっています。
開成山大神宮
明治9年、安積開拓に関わる人々の心のよりどころとして創建された神社です。安積疏水の起工式や通水式の式典の会場にもなりました。
郡山市開成館
安積開拓時の郡役所で、ここに福島県開拓掛が設置されました。地元の大工が錦絵や建物の見聞を通じて得た情報のみで建設された「擬洋風建築」となっています。後に県立農学校にも使用され、明治天皇の2回にわたった東北御巡幸の際には、行在所(宿泊所)や休憩所にもなりました。(令和3年2月13日の地震の影響で令和4年7月現在、休館中)
十六橋水門
安積原野へ水を流すために、猪苗代湖の水位を調整する水門です。安積疏水工事で一番最初に工事が行われました。当時は16の石造のアーチでできていて、日本では長大な水門でした。安積開拓・安積疏水開さく事業のシンボル的構造物で、大正期には日本の工業化を進めるべく東京への送電を目的として建設された猪苗代湖第一発電所に併せて、大規模な改修が行われました。平成20年度に経済産業省の「近代化産業遺産郡 続33」に認定されました。
安積疏水麓山の飛瀑
明治15年(1882年)に安積疏水の通水を記念して造られた滝です。安積疏水事業の記念碑的建造物で、安積疏水の最終地点、麓山公園の一角に築かれた石造構造物です。
沼上発電所/ 竹之内発電所/ 丸守発電所
いずれも製糸業、紡績業の発展、そして人口増加に伴って、建設された発電所で経済産業省の「近代化遺産」にいずれも登録されています。
猪苗代湖
北に磐梯山、南に日本で4番目の広さを誇る猪苗代湖。天を映す鏡のような湖に例えられ、「天鏡湖」とも呼ばれています。この湖の水の恩恵を受けるべく、「安積開拓・安積疏水開さく事業」が行われました。
まとめ
日本には素晴らしい歴史・文化資源が数多くあります。現在、日本遺産に認定されているストーリー以外にも素晴らしいところもまだまだたくさんあります。受け継がれてきた歴史・文化資源の良さを見つめ直し、後世に受け継いでいきたいですね。